タイ、紅蓮に導かれて

2023年11月22日~12月3日まで京都で蓮の写真展を開催します。
今年のサブテーマは「道」と決めていました。
私たちは「今を生きる」をやりつつ、その人ならではの「道」を歩んでいるのです。
そのことを伝えることができる撮影をしたい!
テーマは決めたものの、どんな写真が撮れるかも想像さえもできない自分がいました。

そんな時…

たまたま目にしたこと
「タイの北東部に湖一面に紅蓮が咲くところがある!」
そんなことを知ると、蓮好きの私の心が動かないはずはありません。

タイでは有名らしいですが、日本となれば情報も少なく
SNSを通して情報を集め始めました。初めにわかっていたのはこのふたつ
ウドンタニ
花の時期は12月~2月

断片的な情報を集め今年1月タイへと飛び立ちました。
ウドンタニへはバンコクから国内線でおよそ1時間。

そして蓮が咲くのは朝!
バンコクのホテルを3時に出発しドムアン空港へ。
ワクワクした思いを胸に機上の人となりました。
ウドンタニ空港で車をチャーターし
タレ―ブアデーンをめざします。

「タレ―ブアデーン」
タイ語でタレ―=海 ブア=蓮 デーン=赤
実際は海ではなく、ノーンハーン湖という湖なのですが
海のように広いその水面にはぎっしりと蓮の花が咲き乱れています。

空港から1時間ほど車を走らせると
ドライバーさんと時間の打ち合わせをし船のチケットを購入します。

船着き場の手前で
青空のもと、光り輝く蓮たちをカメラにおさめる気マンマンの私は
心の中で叫びました。
あー!お天気がよくない!


それまでいろいろ検索し私が想像していたのは
青空の元、美しい蓮たちが咲き乱れる様子!
「こんなはずじゃなかった~」
でも仕方ありません。
乗船券を買い、一人乗り用の船に乗り込みます。
人数が多いと遊覧船のような船に案内されますが
ひとりの私は船頭さんだけの細長い船。
ライフジャケットをもらい乗り込みます。
船着き場からどんどんすすみます。
海のように広いここは、ノーンハーン湖という湖。(総面積約36㎢)
進むにつれて一面の紅蓮。
空が灰色なのも忘れるくらい、群生する蓮たちに心を鷲つかみにされる私。
初めて出会う風景です。

あれっ!初めてなんだけど、見覚えのある景色。
記憶の引き出しの取っ手に心の手が触れた瞬間でした。
それは幼稚園の頃に読んでいた絵本「きんいろのしか」の一場面。

主人公のホセンがきんいろのしかを探しての旅の途中。
象に案内されてたどりついたところ。
ずっと覚えていたわけではないのに、記憶の引き出しから飛び出してきた。
遠い記憶との再会。

空の色は思っていたものとは違いましたが
蓮たちとの出会いに心弾んだ私。
ウドンタニの街まで戻り明日の朝の空に望みを託します。

翌朝、ホテルで頼んでいた車に乗り込み再びタレ―ブアデーンを目指します。
チケットを買うことも一度経験していることは安心感があります。
昨日と同様船に乗り込み、蓮たちを目指します。
でも残念なことに空の色はほぼ昨日と同じ。
自然が相手のことは、こんなことは当然なのです。
バンコクから一泊二日での旅程を組んだ自分の甘さを感じていました。
帰りの飛行機の時間が迫っていました。
ホテルも飛行機もすべて手配済みです。
その時に撮れる精いっぱいの撮影をし、心ひかれつつバンコクへ戻りました。
今回の旅は、ウドンタニでは余裕なきスケジュールでしたが
ある目的もありバンコクでは比較的余裕がありました。
一泊二日で行ってみて空港からの行き方、時間配分はわかったので
バンコクから日帰りでもいけないことはない!
このまま帰国してしまったら、心残りです。
日本からの距離とバンコクからの距離。
もう一度チャレンジしてみたい!
航空券手配をし、夜明け前の3時出発。国内線のドムアン空港へ向かいます。
ウドンタニ空港に到着後、車の手配のカウンターに行くと
「あれ、またきたの?」と歓迎してもらい
車中の人となり、タレ―ブアデーンをめざします。
到着してみると、チケット売り場で「まだ船は出ない」と言われます。
今回は日帰りで、帰りの飛行機の時間も決まっているため
私の心は焦ります。
この日は風が強く船を出してくれないのです。

待つ間も、いろいろと心の葛藤でした。
思い切って来てみたものの、やはりダメだったか~
でもチャレンジした自分を励ましながら、待ち続けました。
一時間も待ったでしょうか?
ようやく船が動きはじめチケットを購入し乗り込みます。
空も曇っていてどんよりしていました。
でも私の心は3回目、ここに来られたことに満足していました。
広大なノーンハーン湖の中をどんどん進んでいきます。
すると、空が変わり始めたのです。
青空が広がり、朝日に照らされて紅蓮たちはイキイキと輝いていました。
群生した蓮たちが湖面に「道」を作っていました。

ここでの蓮は、「道を生きる」ことを教えてくれました。
蓮はそれぞれの地で蓮ならではの道を生きています。
私たち人間も、ひとりひとり、それぞれの道を生きているのです。
日々いろんなことが起こります。
でも、泥の中から一本の軸を通し大輪の花を咲かせる蓮のように
凛と美しく生きよう。
タイでの経験は私にたくさんのことを教えてくれました。
そして、あの日青空をのもと撮影した写真は今年の
山本かな写真展 蓮 「今を生きる」
(2023年11月22日~12月3日)の案内を飾る
メイン写真となってくれました。

会場にて是非この「道」をみて感じてもらえたら幸いです。

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この記事を書いた人

山本香菜のアバター 山本香菜 サンロータス.

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